2012-11-05

危険なメソッド A Dangerous Method

「無意識の発見者」として知られるユングとフロイト。ユングの患者で愛人だった女医ザビーナ、この三人の関係を描いた舞台劇を映画化した鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督は「狂気の中の正気」「正気の中の狂気」を描いてみせる。

そこで語られる心理哲学はとても面白く、オカルトなど非科学的なことに引きずられるユングに対し、研究室にそのようなものは持ち込むべきではないとするフロイトの対立から、神経症は特異な事例ではないとしてユングと決別するフロイトは精神分析を人間の本質に見ようとする姿勢が明確に示される。

そのふたりの学説に一石を投じる女医ザビーナは『性衝動は自我を守るものではなく自我を破壊し新たな自我を生み出すもの』と語り、そのフロイトをうならせる。

人間とは何なのかを問い続けたフロイトとザビーナがナチズムに殺されたのに対し、病理学として精神分析を解いたユングは精神的破綻に陥りながらも、戦後まで生き延び、学術に貢献したという。

ユングがザビーナの潜在的性的な興奮であるスパンキングを実践した映像が繰り返され、患者から女医になったザビーナと患者側になりながらも医師の立場を固辞し続けたユングという構造が「正気と狂気」の違いを描きあげていた。

精神分析学が重要視される時代、ユングとフロイト、どちらの立場に立つのかでこれからの人間のあり方が変わってくるだろうし、薬物治療の是非が問われてくるだろう。

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